業務実績
平成21年度粟国村体験滞在交流促進事業 粟国・島あしび推進事業
1.事業の目的
「粟国・島あしび推進事業」は、離島村である粟国島のかけがえのない宝である自然と文化を大切に守りながら活用し、体験滞在交流型の観光を推進することで、持続的な粟国島の活性化に資することを目的に実施する。
2.事業の背景と基本方針
那覇市の北西約60キロの海上に浮かぶ粟国島は、周囲12キロ、人口800人あまりの、豊かな自然と伝統文化を残す離島村である。離島であるがゆえに子供たちが中学卒業後に島を離れることを余儀なくされるなど、沖縄本島等への人口流出による過疎化、高齢化が深刻で、島の経済活性化が喫緊の課題となっている。
一方で近年、観光交流の推進によるまちづくりが全国的に注目を集めており、地域住民と訪問者(観光客)の積極的な交流をとおしたツーリズム振興による経済活性化の先進事例が多く報告されている。このような地域の未来を切り開く活性化策としての「観光まちづくり」においては、住民が自分の住む地域のことをよく知り、地域の自然資源や文化資源等について誇りを持って紹介することで、地域住民、訪問者双方の感動を生み出し、満足度を高めることが重要となる。
これらのことから、本事業では、粟国村がこれまで実施してきた様々な地域活性化、観光促進、特産品開発等の事業の成果を踏まえて活かしつつ、体験プログラム開発とそのツールづくりやガイド人材の育成、運営体制づくり、地域資源のデータベース化などを着実にすすめることで、事業終了後も持続的に交流が促進できるよう業務を実施した。
3.事業概要
- 推進協議会の開催
- ねらい
「粟国・島あしび推進事業」の円滑な実施と事業後の持続的な運営体制の構築に向け、村内各団体の代表者、行政関係者、関連事業者等による推進協議会を組織した。推進協議会では、村内の状況や村外先進地の事例等について踏まえながら事業内容の検討を行うとともに、本事業の取組に積極的に参画することで「粟国・島あしび」の推進母体づくりの端緒とした。 - 概略
平成21年12月1日の第1回目から平成22年3月13日(土曜日)の第5回開催まで、計5回の協議会を開催したほか、委員が中心となり平成21年12月15日~17日の4日間、沖縄県内の地域おこしの先進地(名護市勝山区、伊江村、東村、読谷村)を視察した - 実施結果
「体験滞在交流を通した島おこし」と一口に言ってもなかなかイメージがわかないもので、第1回の委員会で出た「とにかくまずは見てみないとわからない」との意見の通り、先進地視察、ガイド講座、体験プログラム開発講座を段階を追って実施するというプロセスを経て、委員の皆さんが実感として体験交流プログラムのもたらす効果を理解することにより、協議会での討議内容もより具体的に充実するようになった。
- ねらい
- 先進地視察調査の実施
- ねらい
民泊やエコツーリズム、体験学習等を通して島おこしを実現してきた沖縄県内の先進地を視察することにより、体験滞在交流プログラムの地域活性化に果たすインパクトの大きさを実地で体感するとともに、その立役者であるリーダーの皆さんと意見交換することで、その成果が一朝一夕になし得たものではなく、どの地域も各々の課題解決に向けてゼロから手探りで取り組んできたことを知り、粟国での参考とすることを目的に実施した。 - 概略平成21年12月15日(火)~12月17日(木)3泊4日
- 1日目午前
- 名護市勝山区シークヮーサー・山・ヤギによる島おこしの実例視察
- 午後
- 山城克巳観光協会長講演、民泊の様子視察、カーサビエントにて宿泊
- 2日目午前
- 伊江島視察
- 午後
- 東村(慶佐次ふれあいヒルギ公園、港川ファーム、海ぶどう養殖場見学)、山城定雄さん講演会、民宿島ぞうりにて宿泊
- 3日目午前
- 読谷村むら咲むら(体感人材バンク国吉社長講演会、方言講座・グラウンドゴルフ体験)
- 実施結果
勝山区の宮城区長さんの真摯にそして大胆に着実に島おこしに取り組む姿、伊江村民泊での心から受け入れを楽しんでいる民家の皆さんのイキイキとした姿、東村山城定雄さんのこれまでのご苦労と発想の転換から生まれた成功、読谷村むら咲むらでの婦人会がパワーを発揮しての試行錯誤のお話しなどに触れることを通して、粟国でも何かができそう、できることからはじめようという雰囲気が委員の皆さんの中から生まれた。
- ねらい
- 人材育成講座の開催
- ガイド・インストラクター実践講座
- ねらい これまで粟国村で開催された「宮古の農家民宿講演会」(津嘉山千代さん)、「粟国の宝講演会」(屋比久壮実さん)や、『発見!あぐにの宝 自然ガイドブック』の発行、12月の先進地視察などを通して、島の皆さんの間で広がっていた体験滞在交流プログラムへの興味を、「自然体験活動ガイド術講座」というかたちで具体的なノウハウやコツを学ぶことで、「自分たちにもできそう」という期待感につなげるとともに、より多くの参画の輪を広げることを目的に実施した。
- 概略平成22年3月3日(水)~5日(金)、離島振興総合センターおよび島内実地で実施。
- 講師
- ホールアース研究所の田中啓介氏・小林政文氏
- 1日目
- 目標・目的の共有化/アイスブレイク(場を和ませる)/自然体験活動の理念/エコツアーガイドの役割
- 2日目
- 朝のアイスブレイク/モデルエコツアー体験/インタープリテーション論 エコツアーガイドに必要な要素とは?/インタープリテーション実習/グループワーク&実践/プログラムデザイン(”気づき”の流れを組み立てる)
- 3日目
- 朝のアイスブレイク/モデルプログラム作り(グループワーク&実践)/ふりかえり・閉講式
午後には、屋比久壮実氏の案内によりボージャーの遊歩道にて自然観察会を体験
- 実施結果1日目17名、2日目13名、3日目15名でのべ45名の参加があり、毎日新しい顔ぶれが増えるなど、日に日に参加者と関心の広がりを感じた。実際のガイド術に触れるとともに、島の魅力を伝える観光プログラムの企画を経験したことで、これまで漠然としていた粟国島での体験滞在交流のイメージをより具体的につかむことができ、参加者間で確かな手応えが感じられた。
- IT講座
- ねらい 「粟国・島あしび」の推進に向けて、携帯によるブログの情報発信手法を学び、風景や行事、日々のできごとなど、個人個人が島の魅力を発信できるようになることを目的に実施した。
- 概略
平成22年3月15日(月)19:30~21:00、村役場2階会議室にて実施。「粟国・しまのたね通信」を活用して携帯による情報発信術の研修を行った。
- 実施結果
ガイド講座や体験プログラム開発講座に参加された方も、島の魅力を対外的に発信する手軽な方法として携帯によるブログへの投稿手法を学んだことで、今後の積極的な観光情報の発信が期待できるようになった。
- ガイド・インストラクター実践講座
- 体験プログラムの開発
- 自然観察体験プログラム
- ねらい
粟国島の自然を活かした体験滞在交流の促進に向け、次年度以降のガイドの実践に備えられるよう、これまでの『発見!あぐに島 自然ガイドブック』の発行によって掘り起こされた島の宝である自然資源を活かした体験プログラムを作成した。
- 概略
- 海岸植物観察
沖縄の海岸植物のうち50種類もがひとところで観察できるという魅力を活かし、ナビィの恋のロケ地であるボージャーの遊歩道を活用しての海岸植物観察プログラムを開発し、ガイドマップおよびガイド用テキストを作成した。
- 地質観察
凝灰岩や礫岩、玄武岩など島の形成を物語る地層をひとところで観察できるという利点を活かした観光プログラムの実施に備え、島の南海岸の探索マップおよびガイド用のテキストを作成した。
- 野鳥観察様々な珍鳥や、留鳥、渡り鳥を観察できる粟国島の利点を活かした観光プログラムの実施に備え、探鳥エリアマップを作成した。
- 実施結果
海岸植物の観察プログラムについては、屋比久壮実氏の案内で実際に遊歩道を散策しながらガイドを体験した。
- ねらい
- ゆんたく里あるき体験プログラム
- ねらい 島の歴史に詳しい人材を活用し、来訪者とのふれあい交流を通して島の魅力を伝えることを可能にするため、ゆんたく(おしゃべり)しながらの集落内散策を体験プログラムとして開発した。
- 概略ホールアース研究所の小林政文氏を講師に招き、東・西の両集落内を島のみなさんと散策しながら説明ポイントを掘り出し、ワークショップを開いて案内コースを作成した。
- 実施結果あいにくの天気にもかかわらずたくさんの参加者があり、島の皆さんの熱意によってひとつの体験プログラムが完成した意義は大きい。
- 芸能体験プログラム
- ねらい島の青年会が中心となって進めている伝統芸能の普及の動きと連動させながら、エイサーや三線の指導方法について先進事例をもとに指導することで、芸能普及と体験プログラム開発の双方に資することを目的に実施した。
- 概略
- 三線体験恩納村の沖縄体験ニライカナイの照屋将人氏を講師に迎え、初心者への三線指導の組み立て方や教えるコツ、教材等を伝授した。
- エイサー体験同じく照屋氏を講師として、初心者へのエイサー指導のコツなどを伝授した。
- 実施結果文化芸能の次世代の継承、青年会の活性化という観点からも指導法習得のニーズが高かったため、青年会メンバーの熱心な参加があった。
- 料理・特産品製造体験プログラム
- ねらい島の婦人会や生活研究会を対象に、家庭料理や特産品のもちきびかりんとうづくりについて、体験プログラムとしての組み立て方、指導法、留意点などを指導することで、すぐに実行可能な体験プログラムづくりを進めることを目的に実施した。
- 概略
- もちきびかりんとうづくり体験人気の土産品として定着している生活研究会のもちきびかりんとうについて、その製造体験の指導方法、安全管理の仕方、原価計算等を伝授した。
- 家庭料理体験婦人会を対象に、ゆしどうふ他の家庭料理づくりを試行して体験プログラムとしての組み立て方、指導のコツ、安全管理等について指導した。
- 実施結果もちきびかりんとうづくりは既に体験プログラムの受け入れ経験もあったため、参加者の意識が高く、すぐに実行可能なプログラムとして期待が持てる。家庭料理体験は、粟国の海水を使ったゆしどうふづくりで島らしさを活かしたプログラムとなった。
- プログラム実施ツールの制作
- ビジターセンター展示パネルの制作
- ねらい「粟国・島あしびビジターセンター」において訪問者へ粟国の楽しみ方に関する情報を提供するため、季節暦を作成して展示した。
- 概略季節暦A1サイズ/4色/○加工
- ビジターセンターリーフレットの作成
- ねらい今年度完成した「粟国・島あしびビジターセンター」の概要を伝えるとともに、粟国島で今後提供予定の体験プログラムを紹介することで、粟国島における体験滞在交流促進の取り組みおよび本事業に関するPRを行う。
- 概略A4版/横置き/3折/両面4色刷り/1000部印刷
- 体験プログラムガイド用A4フリップ印刷・ラミネート加工
- ねらい体験プログラムのガイド時に、粟国の自然や文化についてわかりやすく伝えるためのツールとして活用できるようA4サイズのフリップを作成した。
- 概略野鳥50種・植物50種・地質10種のガイド用フリップを作成し、ラミネート加工した。
- ボージャー遊歩道案内板設置
- ねらい粟国を訪れる観光客が気軽に植物観察できるよう、また初心者のガイドでも安心して植物観察のガイドができるよう、ボージャーの遊歩道に植物に関する案内板を設置した。
- 概略遊歩道の東側・西側の両方に計45カ所、30種類の植物に関する案内板を設置した。
- ビジターセンター展示パネルの制作
- 地域資源のデータベース化・マーケティング調査
- 地域資源のデータベース化
- ねらい粟国島の宝である自然資源、文化資源についてカード型のデータベースとして整理することで、体験ガイドの皆さんがいつでも活用できるようにする。
- 概略A5版/横置き/カラー/自然分野・文化分野から200種類
- フェリー乗船客調査
- ねらい粟国村ではこれまで観光関係の統計データ等の整備が不十分であるため、今後の観光振興に向けた施策検討に資する基礎データの整理を行った。
- 概略粟国村営フェリーの過去2ヶ年分の乗船名簿を分析し、観光客の割合、滞在日数等について算出した。
既存統計データを観光振興の観点から再整理した。
- 地域資源のデータベース化
- 制作物一覧
制作物 種類 内容 / 規格 部数 対象者 ビジターセンター展示パネル 季節暦 3枚組(1~4月、5~8月、9~12月各1枚) / A1 フルカラー 3枚 一般 島 島案内マップ / A1 フルカラー 1枚 一般 地質 ガイド用マップ / A1 フルカラー 1枚 一般 探鳥 ガイド用マップ / A1 フルカラー 1枚 一般 リーフレット ビジターセンター センター概略、プログラム紹介 / A4 横置き 三折 両面4色 1000部 一般 遊歩道案内板 植物 ボージャー遊歩道内45ヶ所、植物30種 / アルポリック板 カラープリント UVラミネート貼 45基 一般 探索ガイドマニュアル 植物 観察ガイド用テキスト / A4 50ページ 原本1部 ガイド 地質 観察ガイド用テキスト / A4 12ページ 原本1部 ガイド 探索ガイドマップ 植物 観察ガイド用マップ / A3 フルカラー 原本1部 ガイド 地質 観察ガイド用マップ / A3 フルカラー 原本1部 ガイド 野鳥 観察ガイド用マップ / A3 フルカラー 原本1部 ガイド ガイド用フリップ 植物 45種 / A4 縦置き 両面フルカラー ラミネート加工 2セット ガイド 地質 10種 / A4 縦置き 両面フルカラー ラミネート加工 2セット ガイド 野鳥 45種 / A4 縦置き 両面フルカラー ラミネート加工 2セット ガイド 地域資源データベース 植物 85種 / A5 横置き カラー 原本1部 ガイド 地質 20種 / A5 横置き カラー 原本1部 ガイド 野鳥 50種 / A5 横置き カラー 原本1部 ガイド 昆虫 10種 / A5 横置き カラー 原本1部 ガイド 文化 名所・景勝地15種、文化・伝統14種、農作物6種 / A5 横置き カラー 原本1部 ガイド
- 自然観察体験プログラム
カテゴリー:地域活性化