カルティベイトな日々

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17 10月

『アジア青年の家』とファシリテーション その-5「成果発表」

Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, ファシリテーション, 平井雅 on 17.10.10

シリーズ最終回の今回は、セッション2で行われた成果構築と、その結果を発表した「成果発表会」についてご紹介します。
80名全員が参加できるように工夫すること、短い時間の中で一定以上の完成度を確保することが命題となる中、参加青年、チューター、ファシリテーターがそれぞれの力を目一杯発揮しての作業となりました。

◎「バックキャスティング」

今回の成果構築では、「バックキャスティング」という手法を用いました。バックキャスティングとは、将来のあるべき社会の姿を想定し、そこから現在を振り返ることで、そこに辿り着くために必要な行動を考え実行に移すというやり方です。

「前を見通す」という意味のフォアキャスティングが、現状分析から出発して将来どのようになっているかを予測するのと違い、将来の良いビジョンを描くことを出発点とすることで、一見解決が不可能だと思われる課題について考えるのに適しているといわれています。例えば、地球温暖化などの環境問題を考えるときに使われています。

今回は、2030年の地球のありたい姿=Vision 2030を描き、そのビジョンを実現するために10年後に自分たちが取っている行動=Action 2020を逆算し、そのために今自分ができることを考え、実行するという方法を通して成果構築を行いました。

バックキャスティング。クリックで拡大します。

バックキャスティング。クリックで拡大します。

◎ワールドカフェによる全体の意見の洗い出し

Vision 2030とAction 2020を考えるにあたっては、第2セッションの一番はじめに「ワールドカフェ」と呼ばれるワークショップを開催しました。ワールドカフェとは、不特定多数の様々な背景を持った人々が一つのテーマについて話し合うときに、短い時間でたくさんの コミュニケーションをとることができる手法で、最近では全国各地でさまざまな分野において実施され、成果を上げています。

8月19日、伊江島民泊から帰ってきた80名の参加者を迎えたのは、王様のような帽子をかぶってワールドカフェのホストとなった16名のチューターたちでした。

入口看板

ホスト

参加者を温かく迎えるのも、ワールドカフェの特徴の一つです。今回はファシリテーターとチューターが色々と工夫を凝らしての楽しいカフェづくりになりました。

【ワールドカフェの進め方

会場を世界のカフェに見立てます。

ひとつひとつのテーブルがカフェです。

それぞれのカフェにはホストがいます。

参加者がやることは、与えられた質問(テーマ)について「思い思いにおしゃべりする(対話する)」ことです。

ただし、自分でしゃべったこと、人がしゃべって印象に残ったことは 机の上の模造紙に書き留めます。 絵を描いてもいいです。

18分が経過したらそのテーブルでの対話を止め、それぞれ好きなカフェに移動して、また別の人とおしゃべりをします。

このようなことを3回くり返した後、各自が紙に、対話を通して自分が大切だと思った要点を書いて壁に貼りだします。

それらの意見を全員で眺め、1人3枚ずつ配付された色つきの丸シールを貼って人気投票することで、80名全体の意見の傾向を見える化します。

ワールドカフェのセッション

ワールドカフェのセッション。様々な参加者と気軽におしゃべりができる。

今回のワールドカフェでは、2つの問いを参加者に投げかけました。1回目のカフェではQ1.を、2回目と3回目のカフェではQ2.を質問しました。

Q1. あなたにとって、水問題に関する2030年のありたい地球の姿(Vision2030)はどのようなものですか?

Q2. あなたにとって、2030年のありたい姿を実現するために2020年にとっていたい行動 (Action2020)はどのようなものですか?

3回のカフェの後には、Vision 2030およびAction 2020について、各々が思うことをB5版の用紙に書き出し、会場後ろの壁に張り出しました。これが、これから始まる「起草作業」の基礎資料となるのです。

張り出されたVison 2030

張り出されたVison 2030。この後、丸シールを貼って人気投票した。

この日のワールドカフェのワークショップに込めたファシリテーターとしての意図は以下の2点でした。

  1. 第1セッションまでのグループをシャッフルして議論をすることで、ものの見方の多様性と共通性に気づく。
  2. バックキャスティングによるVision 2030とAction 2020の意義を理解し、80名の意見の全体像を見える化する。

◎4つの委員会による構築作業

成果構築に割ける作業時間は、8月19日から22日までの4日間計7時間だけです。その短い時間の中で、効率的に作業を進め、かつできるかぎり全員参加で望むというミッションを達成するため、以下の4つの委員会を結成し、80名の参加者を担当分けしました。ファシリテーターとチューターも各グループに振り分けられました。

  1. 起草委員会(Vision 2030 とAction 2020、創作詩の起草)
  2. アートビジュアル委員会(3m×5mの巨大ビジョンボードの制作)
  3. ステージ進行委員会(成果発表会のステージ制作)
  4. パフォーマンス委員会(音楽の演奏や朗読)

起草委員は、他の委員会に先駆けてVision 2030 とAction 2020の起草をすることが求められており、たいへんなプレッシャーの中での作業になりました。最初どのようにまとめていいかわからない中での手探りの作業に焦りを感じる場面もありましたが、結果的に素晴らしい宣言文(Vision 2030/Action 2020)と創作詩『KISEKI』を書き上げました。チューターもファシリテーターも口出しはできるだけ慎み、悩む参加青年たちを温かく見守り続け、まさに「助産師」の役割に徹したことが、参加青年の力を引き出す結果になったと思います。

ワールドカフェの結果を基にVision2030を考える起草委員

ワールドカフェの結果を基にVision2030を考える起草委員

アートビジュアル委員会では、これまで英語によるディスカッションでは無口だった青年も含め、ひとりひとりが大きなビジョンボードの描画に貢献し、最後の夜までホテルの廊下にボードを広げて作業を続けるなど、みんなの努力で作品を完成させました。

アートビジュアル委員会

アートビジュアル委員の参加者たち

ステージ進行委員会とパフォーマンス委員会は、協力し合いながらも、できあがった成果物をどのように効果的にプレゼンテーションするか、発表会の完成度を高める努力を続けました。中でも、有名曲の替え歌として水問題に対する自分たちの学びを表現した「We Are The World」のパフォーマンスは秀逸なものとなり、成果発表会では参列者の感動を呼んでいました。

会場の図面を手にするステージ進行委員

会場の図面を手にするステージ進行委員のチューターと参加者

ピアノの伴奏に合わせて歌の練習

ピアノの伴奏に合わせて練習するパフォーマンス委員の参加者

◎成果発表会

8月23日、アジア青年の家最終日。成果発表会は、沖縄コンベンションセンターで開催されました。この日発表した制作物は、1.“AYEPO2010 Declaration”(Vision 2030 / Action 2020)、2.Vision2030を視覚化したビジョンボード、3.“We are the world”のAYEPO 2010 Version、4.創作詩“KISEKI”の4点。それらの完成度の高さと感動的な出来映えに、会場を訪れた来賓、関係者の中には涙ぐむ方も多かったです。

沖縄コンベンションセンターでの成果発表

沖縄コンベンションセンターでの成果発表

<今回の成果物>

  1. “AYEPO2010 Declaration”ツ黴? (Vision 2030 / Action 2020)
    2030年にありたい地球の姿、それを実現するために 私たちが2020年にとっているべき行動Actionを表現する宣言

    宣言(英語)

    宣言文(英語)/クリックでPDF表示。

    宣言(日本語)

    宣言文(日本語)/クリックでPDF表示

  2. ビジョンボード
    Vision2030で表現される地球の姿と、それに至るまでの道のりを視覚化

    3m×5mのビジョンボード

    3m×5mのビジョンボード

  3. “We are the world”ツ黴? 窶骭? AYEPO 2010 Version
    3週間の学習の成果として得られた自分たちの気づきを歌詞とし、 歌って表現することが「自分たちの最初のアクション」

    We are the world AYEPO2010バージョンを歌う参加者

    We are the world AYEPO2010バージョンを歌う参加者

  4. 創作詩“KISEKI”
    これからの自分たちの行動の一歩として詩を創作して朗読

    名称未設定-1

    創作詩KISEKI(クリックでPDF表示)

*         *         *         *         *

今回、5回にわたりシリーズで「アジア青年の家」事業における学習サポート業務をどのように実施したかをご報告しました。本業務では、ファシリテーションのノウハウを随所に盛り込むことで大きな成果を上げることができ、ファシリテーションの底力を再認識させられました。

本事業の実施にあたり、主催者である内閣府の皆さま、ロジスティック関連業務を担当し生活面で私たちの面倒を見てくださった株式会社JTBコミュニケーションズの皆さま、ドキュメンタリー番組を制作して下さった琉球放送および番組スポンサーの皆さま、その他、様々な形で事業に関わっていただいた皆さまに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

那覇空港での涙の別れ

那覇空港での涙の別れ

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06 10月

『アジア青年の家』とファシリテーション その-4「グループディスカッション」

Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, ファシリテーション, 平井雅 on 06.10.10

シリーズ4回目の今回は、セッション1で行われたグループディスカッションについて、ファシリテーターチームの意図や工夫などをご紹介します。
これらのディスカッションの準備に際しては、議論の「構造化」をスムーズに行うため、ファシリテーションの「見える化」のノウハウを随所に活かしました。

◎グループディスカッション?「水問題に関する情報共有、共通点、相違点の認識」

8月10日に行われた最初のグループディスカッション?では、アジア各国の水問題に関する「共通性」と「多様性」について認識し、全体を俯瞰することを目的に、模造紙と付箋紙を用いたワークを準備しました。最初のグループディスカッションということで、より発言しやすくするため、10人ではなく5人1組で話し合いをしてもらいました。

最初は、それぞれの国or地域の水問題について各自が付箋紙に書いて張り出します。
その後、皆で話し合って共通点と差異を見つけ出し、以下の模造紙に分類します。

共通性と多様性を見える化するための工夫

共通性と多様性を見える化するための工夫

この模造紙は、真ん中に円が描かれ、全体を5つに分けた線が引いてあります。5人1組ですから、各国や地域の問題点を外側の5つの部分にそれぞれ張り出し、真ん中に共通点を張り出すことができます。これによって共通性と多様性をビジュアライズすることができるわけです。

◎グループディスカッション?「問題と背景を考える」

8月11日のグループディスカッション?では、水問題に関する5つのキーワードから問題と背景について考え、スキットによるプレゼンテーションを行いました。

前日のグループディスカッション?では、水問題全体を大ざっぱに把握することが目的でしたが、この日のグループディスカッション?では、さらに進んで「因果関係」(Cause & Effect)を論理的に理解するためのワークを実施しました。

因果関係を考えるワーク

因果関係を考えるワーク

<手順>

  1. 各自水問題のキーワードだと思うことを5つずつ付箋に書き出す
  2. 全員のキーワードを整理して類似のものをグループ分けする
  3. 5つの主なグループを選び出す
  4. それらのグループに名前を付ける
  5. 5つの中から1つだけ「コア」となる水に関する問題点を選ぶ
  6. その「コアの問題点」を模造紙の中心に張り出し、下に「原因」を上に「結果」に張り出す

チューターたちに伝授した構造化のコツは、「コア」の問題点を、例えば「環境問題」のように幅広いものにすると、うまく因果関係が整理しにくいので、できるだけ限定的な問題を取り扱うようにサジェストしました。

このワークにより、何が原因(または背景)でどのような水問題が起こり、その結果としてどのような問題が生まれているのかの関係性を論理的に理解してもらうことをねらいとしました。

Cause & Effectを整理

Cause & Effectを整理

ところで、このような論理的に複雑なワークをファシリテートする場合、直前のインストラクションが大変重要になってきます。

私たちファシリテーターチームは、ディスカッションの枠組みをよく検討した上で、インストラクションについても入念に準備しました。

ファシリテーターによるインストラクション

4人のファシリテーターによる入念なインストラクション

この時工夫したのは、例えば、各テーブルに着席した状態では参加者の注意が散漫になるので、会場後方のスペースを活用してできるだけ密集した形で(しかも体育座りで)インストラクションを聞いてもらいました。これによって、全体の関心を一点に集中させました。

参加者の集中を促すために会場後方のスペースを活用して密集形式で説明

参加者の集中を促すために密集形式で説明

◎グループディスカッション?「水問題に関する解決施策の立案」

8月12日のグループディスカッション?は、小嶋公史先生の講義の内容と連携して実施しました。8カ国をサンプルに取り、それらの国々の開発委員会のメンバーになったつもりで、水問題に関する施策を立案するというハイレベルなディスカッションにチャレンジしました。

小嶋先生からそれぞれのグループが与えられた国々は以下の8つです。

Group 1: Cambodia
Group 2: China
Group 3: India
Group 4: Kazakhstan
Group 5: Mauritania
Group 6: Mongolia
Group 7: Pakistan
Group 8: Saudi Arabia

モーリタニアの例

モーリタニアの例

これらのディスカッションの後、2030年の地球のありたい姿を描く「ビジョンボード」の説明を行い、第1セッションの終わりに中間発表会として実施する「水問題に関する発表会」の準備に取りかかりました。

◎グループディスカッション?「KPTT」

チームビルディング」の回でご紹介したように、グループディスカッション?では、KPTT方式によってこれまでのグループディスカッションを振り返り、グループ全体で認識を共有して、問題解決のための改善点を話合いました。

その後に、中間発表会の準備に取りかかりました。KPTTを経験することで、よりお互いの関係性が深まり、発表会に向けての準備作業に力が入りました。

◎「水問題に関する発表会」

第1セッションを締めくくる発表会として、これまで学んできた水問題に関して各グループでビジョンボードを作成し、スキット(寸劇)形式で発表しました。

グループ3のビジョンボード

グループ3のビジョンボード

グループ5のビジョンボード

グループ5のビジョンボード

グループ6のビジョンボード

グループ6のビジョンボード

各グループとも個性的な内容となり、最後には全員でステージに上がり、We Are The Worldの大合唱になりました。

We are the Worldの大合唱

We Are The Worldの大合唱

このように、私たち学習サポートチームのファシリテーターは、第1セッションでは、2030年のありたい姿(Vision)の構築に向け、現状を把握する、問題点の因果関係を考える、解決策を立案する、ビジョンを描くという大きな流れを設計した上で、毎回のディスカッションを試行錯誤をくり返しながら入念に準備しました。

次回へ続く。

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29 9月

『アジア青年の家』とファシリテーション その-3「チームビルディング」

Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, ファシリテーション, 平井雅 on 29.09.10

シリーズ3回目の今回からは、前回「おおまかなプログラムデザイン」について触れたことを少し掘り下げてみたいと思います。

まずは、チームビルディングの視点からプログラムを振り返ります。

◎チューター合宿

今回、事前にチューター合宿を開催したことは大成功でした。カルティベイトの学習サポートファシリテーターチームは総勢9名で、16名の大学生チューター、2名の大学生記録係を含め、全員で2泊3日の合宿に望みました。

学習サポートチームのファシリテーターとチューター

学習サポートチームのファシリテーターとチューター

合宿に先立って行ったファシリテーターチームの打ち合わせでは、組織開発の理論を援用し、まずはこの「チューター合宿の目標」として以下の5点を明確にしました。

  1. 目標の共有
  2. 役割の共有
  3. 進め方の共有
  4. 水問題に関する知識の共有
  5. 人間関係の構築

これにより、ファシリテーター、チューターとしてプログラム期間中、参加青年の学びと気づきをサポートするために、自分たちは何をすべきかを、意識的に考え、行動できるようになったと思います。特に、我々学習サポートチームと、生活面や宿泊・移動などの面倒を見るロジスティックチームの役割の違いをハッキリさせたことで、プログラム期間中の混乱を少なくすることができました。また、ファシリテーション・スキルの講座を実施することで、ディスカッションの進め方、手法を共有しました。

役割の確認

役割の確認

チューター合宿は、本番の期間中に行うであろうゲームやディスカッション、振り返りの手法を実際にやってみるという、絶好の検証の機会ともなりました。この合宿でやってみた「マシュマロチャレンジ」や「KPTT(ケプト)」などの手法は、ファシリテーター、チューター自身がその効果を実感できたので、本番で自身を持って取り組むことができました。

KPTTを実際やってみて効果を実感

KPTTを実際やってみて効果を実感

今回のチューター16名は、沖縄県出身の大学生と海外から沖縄への留学生、大分県にある立命館アジア太平洋大学の学生(海外からの留学生)から構成されました。全員が個性的・創造的で素晴らしい能力を持ったメンバーが集まりました。そのチューターたちが、合宿3日目の最後には、チームワークといい人間関係といい、ガッシリといいチームになっていて、非常に頼もしく感じました。

<チューターの構成>

  • 沖縄県出身者6名(沖縄大学、琉球大学、沖縄国際大学、関西学院大学の学生およびNY市立大学卒業生)
  • 琉球大学への留学生(ミャンマー、台湾)
  • 立命館アジア太平洋大学への留学生(ベトナム、ブルネイ、インドネシア、タイ、マレーシア、韓国、中国、カンボジア)

このようにチューター合宿では、ファシリテーションの教科書に出てきそうなぐらい、短い期間で素晴らしい成果を上げることができました。

◎マシュマロチャレンジ

まずはマシュマロチャレンジの動画をご覧ください。
↓画面の下の「View Subtitles」をクリックして日本語を選択すると字幕が出ます。

これは、チームワークそのものや、チームでの創造行為、試行錯誤の必要性、 ファシリテーションの有用性について気づかせるグループワークで、マシュマロ1個と20本のスパゲッティ乾麺、粘着テープ、紐などを使い、マシュマロが頂点に乗った状態のタワー状の構造物を作ることを目指します。今回は5人1組を作り、18分間の制限時間内に1番高いタワーを作ったチームが勝ちというルールで進めました。

マシュマロチャレンジ自体、非常に良くできたゲームですが、このゲームの後にグループでしっかり振り返りをすることが重要です。

リーダーは誰だったか、自分はどんな役割を果たしたか。最初に目標を描くことや認識を見える化して共有することの重要性などについて気づく機会となります。

チューターの視点で見れば、自分のグループの参加青年の個性やこれから果たすであろう役割を観察するのに絶好の機会なわけです。

このワークをグループディスカッションの最初に取り入れることで、参加青年は否応なしに「チームワークってどういうこと?」と問いかける視点を持つことになるわけです。

マシュマロチャレンジで塔を建てながらチームビルディング

マシュマロチャレンジで塔を建てながらチームビルディング

◎KPTT(ケプト)

KPTT(ケプト)とは、私たちファシリテーターがよく使う振り返りのワーク手法です。普通KPTと書いてケプトと呼んでいますが、日本ファシリテーション協会沖縄サロンの仲間うちでは、KPTTと最後にTをひとつ余計に入れます。最後のTが結構重要です。

  • 今後も維持したいこと(Keep)
  • 問題だと思うこと(Problem)
  • 今後、試したいこと、改善したいこと(Try)
  • 感謝する人、もの、事柄(Thanks)

今回は、これをチームと個人というマトリックスにかけて利用しました。

KPTTにチームと個人というマトリックスをかける

KPTTにチームと個人というマトリックスをかける(クリックで拡大)

実は、第1セッションの終盤、中間の発表会の直前にKPTTを実施したのは、それまでの自分たちのグループディスカッションを振り返り、そこで得られた一体感を一気に発表の準備作業につなげ、達成感を得るために絶好のタイミングだからです。

実際のKPTT模造紙

実際のKPTT模造紙

なぜ、KPTTに効果があるのかは、ファシリテーターの定番理論として有名な「ジョハリの窓(Wikipedia)」が説明してくれます。イケていると思っていること、イケてないと思っていること、チャレンジしたいことなどをお互い話し合ううち(場合によっては“カミングアウト”するうち)に、自然と?の領域が狭まり、コミュニケーションの風通しが良くなるわけです。

Johari_window

また、少し専門的ですが、U理論(Theory U)の観点から言えば、Presensingというブレイクスルーが起こる準備として、お互いの話に耳を傾け、お互いを観察し、共感するというプロセスのきっかにも、KPTTはなりえると思います。

次回に続く

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25 9月

『アジア青年の家』とファシリテーション その-2「プログラムデザイン」

Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, ファシリテーション, 平井雅 on 25.09.10

シリーズ2回目の今回は、3週間のプログラムデザインの大まかな考え方をご紹介します。

◎ チューター合宿

プログラムに先立つ7月17日?19日の2泊3日で16名のチューターを対象とした合宿を開催しました。

日付

時間

内容

7月17日(土) 15:00?22:00 アイスブレイク、内閣府から趣旨説明・注意事項、目標・役割の共有、自己紹介、ファシリテーションスキル講座、チームビルディングゲーム
7月18日(日) 7:00?22:00 モーニングアクティビティ、水問題に関する基礎知識講座、英語によるディスカッション演習、チームワークに関する振り返り、グループディスカッション演習
7月19日(祝) 8:30?12:00 グループディスカッション演習、ビジョンボード作成と発表

◎ チームビルディング

参加青年の緊張を緩め、少しでも多くの参加者と話すきっかけを作り、他の参加者との情報共有を促しやすい環境作りとして、プレセッション、第1セッションではグループディスカッションの前にアイスブレイクを取り入れました。

グループディスカッションを円滑に、効果的に進めていくにはチームワーク、チームの信頼関係が重要になります。そのため、プログラムの初めに、協働作業のゲームとして「マシュマロチャレンジ」を取り入れ、チーム内の個々人がとった行動を振り返り、個々の役割(リーダー、サポーター等)やチームワークについて考えてもらいました。

IMG_1834
第1セッションを終えるプログラムの中盤には、振り返りのための手法(KPTT)を取り入れ、各グループでこれまでに行われたグループディスカッションを振り返り、

今後も維持したいこと(Keep)
問題だと思うこと(Problem)
今後、試したいこと、改善したいこと(Try)
感謝する人、もの、事柄(Thanks)

をグループ全体で話し合い、共有しました。これにより、チームの結束力が強まり、信頼関係がより強固なものとなり、第2セッションで行われたディスカッションと成果構築をさらに効果的なものとすることができました。

※プレセッション、第1セッション、第2セッションのスケジュールはこちらを参照。

◎ プログラム成果物完成に向けたディスカッションの設計

プログラム参加前に、参加者に出身国、地域の水問題についてアンケートを提出していただきました。それを元に、グループディスカッションを各国の水問題についての情報共有から始め、水問題に関する共通点、相違点を確認しました。次に、水問題の因果関係、何が問題(結果)と背景(原因)なのかを考えました。

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次に、プログラムの中盤の「水問題に関する発表会」では、2030年にありたい地球の姿をビジョンボードとして視覚化し、寸劇を交えた発表を行いました。現状の問題点を把握した上で、いきなり2030年にありたい地球の姿(Vision 2030)を描き、それにむけた行動計画(Action 2020)を考えようという、「バックキャスティング」という手法を活用しました。

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第2セッションをはじめるにあたっては、ワールドカフェの手法を用い、各グループの枠を超えて参加青年全員で情報を共有しました。これまでグループ単位でのディスカッションだったため、80人全体の集合的な意識を浮き彫りにすることがねらいでした。

ワールドカフェ
最終成果物の制作は、参加青年全員で役割分担して取り組みました。参加青年を4つのコミッティ(宣言文起案、ビジョンボード制作、バックステージ、パフォーマンス)に分け、本プログラムを通し、学んだ成果を全員が一丸となって最終成果物を完成させることができました。

次回に続く

アジア青年の家の様子がQABのサイトで紹介されています。

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25 9月

『アジア青年の家』とファシリテーション その-1「成果と意義」

Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, ファシリテーション, 平井雅 on 25.09.10

このコーナーでは、『アジア青年の家Asian youth Exchange Program in Okinawa』の学習サポート業務をどのようにプログラム設計し、成果を得ることができたのかを5回シリーズでご紹介することで、青少年の人材育成分野におけるファシリテーションの有用性について明らかにしていきたいと思います。

株式会社カルティベイトは、先日ご紹介したとおり、内閣府主催『アジア青年の家』の学習サポートに関する業務を、沖縄大学、NPO法人万国津梁人財ネットワークとのコンソーシアムで受託させていただきました。

カルティベイトでは、4人のファシリテーターと16人の大学生チューターを率い、ファシリテーションを駆使して3週間の学習サポート業務に取り組みました。

美ら海前

事業の様子は、これまでずっとこの事業を応援してくださっている政策研究大学院大学教授黒川清先生のブログをご参照ください。

◎ 事業の成果

今年で3年目を迎える本事業では、3週間にわたる先進的な講義や有意義なグループディスカッションを経験した80名の参加青年たちが、水環境問題に関する宣言文、ビジョンボード(イラストレーション)、音楽、詩というクリエイティブな成果物を創り上げました。8月23日の成果発表会では、出席者の感動を呼び、関係各方面から高い評価をいただくことができました。

この成功の基礎となったのは、これまでの2ヶ年の事業の経験を踏まえた内閣府の皆さんによる細心のプロジェクト設計があったと思います。今年度から参加させていただいた弊社では、ファシリテーション(協働促進)やグループダイナミクス(集団力学)の理論と手法に基づいた綿密なプログラム設計を行いました。このことにより、参加青年の自主性を引き出しながら積極的な参画を促し、気づきと学びを促進することができたと思います。

◎ 事業の意義

沖縄が、地域的特性を活かして3週間のプログラムを受け入れ、内閣府や講師陣、立命館アジア太平洋大学をはじめとする県外の知見の支援をいただきながら、県内人材を積極登用して本事業を成功させることができたことは、沖縄県が「沖縄21世紀ビジョン」を実現するに向けて、非常に意義深いものだと思います。

本事業は、国際協力の拠点としての沖縄の可能性を示すと同時に、本県においてグローバルな人材を輩出するための若年層向けの人材育成プログラムのプロトタイプとなったといえるでしょう。

特に、人材育成の専門家が大学生の学びを支援し、その大学生が高校生の学びを支援するという有効な仕組みを構築できたことはとても重要だと思います。

◎ 事業の概要

◇目的

日本やASEAN諸国を中心としたアジア各国(オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ヴェトナムの15カ国)の高校生等が、東アジアの中心に位置する沖縄において一堂に会し、3週間の共同生活の中で、優れた科学者や技術を目の当たりにし、ともに世界の水環境問題について議論を進めることにより、我が国の若者のイノベーティブマインドを醸成するとともに、沖縄の将来を担う人材の育成、国際交流拠点としての沖縄の発展に資することを目的とする。

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13 9月

「アジア青年の家2010」

Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, 平井雅 on 13.09.10

グループディスカッション

グループディスカッション

アジア各国の中高校生80名が東アジアの中心に位置するここ沖縄で一堂に会し、内閣府主催「アジア青年の家2010」が開催されました。「考えよう?生命(いのち)を支える水」をテーマに3週間(2010年8月5日?23日)の共同生活の中で講義やディスカッションを通し、世界の水と環境問題について学びました。

(株)カルティベイトは、参加青年の学習をサポートするチームを編成し、今年で3年目を迎える本事業のグループディスカッションを企画、運営し、参加青年たちの水環境問題に関しての更なる理解を深めるお手伝いをしました。プログラム設計は、弊社の得意分野とするファシリテーション(協働促進)やグループダイナミクス(集団力学)の理論と手法に基づいたものにし、参加青年の自主性を引き出しながら積極的な参画を促し、気づきと学びを促進させていきました。

議論を進めていく中で、プログラムの中盤までは意見をあまり言えなかった日本人参加青年たちも、講義を受け、海外からの参加者たちからの刺激を受け、イノベーティブマインドを日々醸成しながら、グループディスカッションの回を重ねていき、プログラムが終了するころには立派に意見を言えるまで成長していました。さらに、参加青年たちは最終成果物として、水環境問題に関する宣言文、ビジョンボード(イラストレーション)、音楽、詩というクリエイティブな成果物を創り上げ、成果発表会において出席者の感動を呼び、関係各方面から高い評価を得ることができました。

閉会式 宣言文

閉会式 水環境問題に関する宣言文発表

本事業は、国際協力の拠点としての沖縄の可能性を示すと同時に、本県においてグローバルな人材を輩出するための若年層向けの人材育成プログラムのプロトタイプとなりました。青年たちの可能性、夢、決して諦めない心、輝きを感じられた3週間でした。

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