カルティベイトな日々

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17 10月

『アジア青年の家』とファシリテーション その-5「成果発表」

Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, ファシリテーション, 平井雅 on 17.10.10

シリーズ最終回の今回は、セッション2で行われた成果構築と、その結果を発表した「成果発表会」についてご紹介します。
80名全員が参加できるように工夫すること、短い時間の中で一定以上の完成度を確保することが命題となる中、参加青年、チューター、ファシリテーターがそれぞれの力を目一杯発揮しての作業となりました。

◎「バックキャスティング」

今回の成果構築では、「バックキャスティング」という手法を用いました。バックキャスティングとは、将来のあるべき社会の姿を想定し、そこから現在を振り返ることで、そこに辿り着くために必要な行動を考え実行に移すというやり方です。

「前を見通す」という意味のフォアキャスティングが、現状分析から出発して将来どのようになっているかを予測するのと違い、将来の良いビジョンを描くことを出発点とすることで、一見解決が不可能だと思われる課題について考えるのに適しているといわれています。例えば、地球温暖化などの環境問題を考えるときに使われています。

今回は、2030年の地球のありたい姿=Vision 2030を描き、そのビジョンを実現するために10年後に自分たちが取っている行動=Action 2020を逆算し、そのために今自分ができることを考え、実行するという方法を通して成果構築を行いました。

バックキャスティング。クリックで拡大します。

バックキャスティング。クリックで拡大します。

◎ワールドカフェによる全体の意見の洗い出し

Vision 2030とAction 2020を考えるにあたっては、第2セッションの一番はじめに「ワールドカフェ」と呼ばれるワークショップを開催しました。ワールドカフェとは、不特定多数の様々な背景を持った人々が一つのテーマについて話し合うときに、短い時間でたくさんの コミュニケーションをとることができる手法で、最近では全国各地でさまざまな分野において実施され、成果を上げています。

8月19日、伊江島民泊から帰ってきた80名の参加者を迎えたのは、王様のような帽子をかぶってワールドカフェのホストとなった16名のチューターたちでした。

入口看板

ホスト

参加者を温かく迎えるのも、ワールドカフェの特徴の一つです。今回はファシリテーターとチューターが色々と工夫を凝らしての楽しいカフェづくりになりました。

【ワールドカフェの進め方

会場を世界のカフェに見立てます。

ひとつひとつのテーブルがカフェです。

それぞれのカフェにはホストがいます。

参加者がやることは、与えられた質問(テーマ)について「思い思いにおしゃべりする(対話する)」ことです。

ただし、自分でしゃべったこと、人がしゃべって印象に残ったことは 机の上の模造紙に書き留めます。 絵を描いてもいいです。

18分が経過したらそのテーブルでの対話を止め、それぞれ好きなカフェに移動して、また別の人とおしゃべりをします。

このようなことを3回くり返した後、各自が紙に、対話を通して自分が大切だと思った要点を書いて壁に貼りだします。

それらの意見を全員で眺め、1人3枚ずつ配付された色つきの丸シールを貼って人気投票することで、80名全体の意見の傾向を見える化します。

ワールドカフェのセッション

ワールドカフェのセッション。様々な参加者と気軽におしゃべりができる。

今回のワールドカフェでは、2つの問いを参加者に投げかけました。1回目のカフェではQ1.を、2回目と3回目のカフェではQ2.を質問しました。

Q1. あなたにとって、水問題に関する2030年のありたい地球の姿(Vision2030)はどのようなものですか?

Q2. あなたにとって、2030年のありたい姿を実現するために2020年にとっていたい行動 (Action2020)はどのようなものですか?

3回のカフェの後には、Vision 2030およびAction 2020について、各々が思うことをB5版の用紙に書き出し、会場後ろの壁に張り出しました。これが、これから始まる「起草作業」の基礎資料となるのです。

張り出されたVison 2030

張り出されたVison 2030。この後、丸シールを貼って人気投票した。

この日のワールドカフェのワークショップに込めたファシリテーターとしての意図は以下の2点でした。

  1. 第1セッションまでのグループをシャッフルして議論をすることで、ものの見方の多様性と共通性に気づく。
  2. バックキャスティングによるVision 2030とAction 2020の意義を理解し、80名の意見の全体像を見える化する。

◎4つの委員会による構築作業

成果構築に割ける作業時間は、8月19日から22日までの4日間計7時間だけです。その短い時間の中で、効率的に作業を進め、かつできるかぎり全員参加で望むというミッションを達成するため、以下の4つの委員会を結成し、80名の参加者を担当分けしました。ファシリテーターとチューターも各グループに振り分けられました。

  1. 起草委員会(Vision 2030 とAction 2020、創作詩の起草)
  2. アートビジュアル委員会(3m×5mの巨大ビジョンボードの制作)
  3. ステージ進行委員会(成果発表会のステージ制作)
  4. パフォーマンス委員会(音楽の演奏や朗読)

起草委員は、他の委員会に先駆けてVision 2030 とAction 2020の起草をすることが求められており、たいへんなプレッシャーの中での作業になりました。最初どのようにまとめていいかわからない中での手探りの作業に焦りを感じる場面もありましたが、結果的に素晴らしい宣言文(Vision 2030/Action 2020)と創作詩『KISEKI』を書き上げました。チューターもファシリテーターも口出しはできるだけ慎み、悩む参加青年たちを温かく見守り続け、まさに「助産師」の役割に徹したことが、参加青年の力を引き出す結果になったと思います。

ワールドカフェの結果を基にVision2030を考える起草委員

ワールドカフェの結果を基にVision2030を考える起草委員

アートビジュアル委員会では、これまで英語によるディスカッションでは無口だった青年も含め、ひとりひとりが大きなビジョンボードの描画に貢献し、最後の夜までホテルの廊下にボードを広げて作業を続けるなど、みんなの努力で作品を完成させました。

アートビジュアル委員会

アートビジュアル委員の参加者たち

ステージ進行委員会とパフォーマンス委員会は、協力し合いながらも、できあがった成果物をどのように効果的にプレゼンテーションするか、発表会の完成度を高める努力を続けました。中でも、有名曲の替え歌として水問題に対する自分たちの学びを表現した「We Are The World」のパフォーマンスは秀逸なものとなり、成果発表会では参列者の感動を呼んでいました。

会場の図面を手にするステージ進行委員

会場の図面を手にするステージ進行委員のチューターと参加者

ピアノの伴奏に合わせて歌の練習

ピアノの伴奏に合わせて練習するパフォーマンス委員の参加者

◎成果発表会

8月23日、アジア青年の家最終日。成果発表会は、沖縄コンベンションセンターで開催されました。この日発表した制作物は、1.“AYEPO2010 Declaration”(Vision 2030 / Action 2020)、2.Vision2030を視覚化したビジョンボード、3.“We are the world”のAYEPO 2010 Version、4.創作詩“KISEKI”の4点。それらの完成度の高さと感動的な出来映えに、会場を訪れた来賓、関係者の中には涙ぐむ方も多かったです。

沖縄コンベンションセンターでの成果発表

沖縄コンベンションセンターでの成果発表

<今回の成果物>

  1. “AYEPO2010 Declaration”ツ黴? (Vision 2030 / Action 2020)
    2030年にありたい地球の姿、それを実現するために 私たちが2020年にとっているべき行動Actionを表現する宣言

    宣言(英語)

    宣言文(英語)/クリックでPDF表示。

    宣言(日本語)

    宣言文(日本語)/クリックでPDF表示

  2. ビジョンボード
    Vision2030で表現される地球の姿と、それに至るまでの道のりを視覚化

    3m×5mのビジョンボード

    3m×5mのビジョンボード

  3. “We are the world”ツ黴? 窶骭? AYEPO 2010 Version
    3週間の学習の成果として得られた自分たちの気づきを歌詞とし、 歌って表現することが「自分たちの最初のアクション」

    We are the world AYEPO2010バージョンを歌う参加者

    We are the world AYEPO2010バージョンを歌う参加者

  4. 創作詩“KISEKI”
    これからの自分たちの行動の一歩として詩を創作して朗読

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    創作詩KISEKI(クリックでPDF表示)

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今回、5回にわたりシリーズで「アジア青年の家」事業における学習サポート業務をどのように実施したかをご報告しました。本業務では、ファシリテーションのノウハウを随所に盛り込むことで大きな成果を上げることができ、ファシリテーションの底力を再認識させられました。

本事業の実施にあたり、主催者である内閣府の皆さま、ロジスティック関連業務を担当し生活面で私たちの面倒を見てくださった株式会社JTBコミュニケーションズの皆さま、ドキュメンタリー番組を制作して下さった琉球放送および番組スポンサーの皆さま、その他、様々な形で事業に関わっていただいた皆さまに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

那覇空港での涙の別れ

那覇空港での涙の別れ

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