06 10月
『アジア青年の家』とファシリテーション その-4「グループディスカッション」
Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, ファシリテーション, 平井雅 on 06.10.10
シリーズ4回目の今回は、セッション1で行われたグループディスカッションについて、ファシリテーターチームの意図や工夫などをご紹介します。
これらのディスカッションの準備に際しては、議論の「構造化」をスムーズに行うため、ファシリテーションの「見える化」のノウハウを随所に活かしました。
◎グループディスカッション?「水問題に関する情報共有、共通点、相違点の認識」
8月10日に行われた最初のグループディスカッション?では、アジア各国の水問題に関する「共通性」と「多様性」について認識し、全体を俯瞰することを目的に、模造紙と付箋紙を用いたワークを準備しました。最初のグループディスカッションということで、より発言しやすくするため、10人ではなく5人1組で話し合いをしてもらいました。
最初は、それぞれの国or地域の水問題について各自が付箋紙に書いて張り出します。
その後、皆で話し合って共通点と差異を見つけ出し、以下の模造紙に分類します。
この模造紙は、真ん中に円が描かれ、全体を5つに分けた線が引いてあります。5人1組ですから、各国や地域の問題点を外側の5つの部分にそれぞれ張り出し、真ん中に共通点を張り出すことができます。これによって共通性と多様性をビジュアライズすることができるわけです。
◎グループディスカッション?「問題と背景を考える」
8月11日のグループディスカッション?では、水問題に関する5つのキーワードから問題と背景について考え、スキットによるプレゼンテーションを行いました。
前日のグループディスカッション?では、水問題全体を大ざっぱに把握することが目的でしたが、この日のグループディスカッション?では、さらに進んで「因果関係」(Cause & Effect)を論理的に理解するためのワークを実施しました。
<手順>
- 各自水問題のキーワードだと思うことを5つずつ付箋に書き出す
- 全員のキーワードを整理して類似のものをグループ分けする
- 5つの主なグループを選び出す
- それらのグループに名前を付ける
- 5つの中から1つだけ「コア」となる水に関する問題点を選ぶ
- その「コアの問題点」を模造紙の中心に張り出し、下に「原因」を上に「結果」に張り出す
チューターたちに伝授した構造化のコツは、「コア」の問題点を、例えば「環境問題」のように幅広いものにすると、うまく因果関係が整理しにくいので、できるだけ限定的な問題を取り扱うようにサジェストしました。
このワークにより、何が原因(または背景)でどのような水問題が起こり、その結果としてどのような問題が生まれているのかの関係性を論理的に理解してもらうことをねらいとしました。
ところで、このような論理的に複雑なワークをファシリテートする場合、直前のインストラクションが大変重要になってきます。
私たちファシリテーターチームは、ディスカッションの枠組みをよく検討した上で、インストラクションについても入念に準備しました。
この時工夫したのは、例えば、各テーブルに着席した状態では参加者の注意が散漫になるので、会場後方のスペースを活用してできるだけ密集した形で(しかも体育座りで)インストラクションを聞いてもらいました。これによって、全体の関心を一点に集中させました。
◎グループディスカッション?「水問題に関する解決施策の立案」
8月12日のグループディスカッション?は、小嶋公史先生の講義の内容と連携して実施しました。8カ国をサンプルに取り、それらの国々の開発委員会のメンバーになったつもりで、水問題に関する施策を立案するというハイレベルなディスカッションにチャレンジしました。
小嶋先生からそれぞれのグループが与えられた国々は以下の8つです。
Group 1: Cambodia
Group 2: China
Group 3: India
Group 4: Kazakhstan
Group 5: Mauritania
Group 6: Mongolia
Group 7: Pakistan
Group 8: Saudi Arabia
これらのディスカッションの後、2030年の地球のありたい姿を描く「ビジョンボード」の説明を行い、第1セッションの終わりに中間発表会として実施する「水問題に関する発表会」の準備に取りかかりました。
◎グループディスカッション?「KPTT」
「チームビルディング」の回でご紹介したように、グループディスカッション?では、KPTT方式によってこれまでのグループディスカッションを振り返り、グループ全体で認識を共有して、問題解決のための改善点を話合いました。
その後に、中間発表会の準備に取りかかりました。KPTTを経験することで、よりお互いの関係性が深まり、発表会に向けての準備作業に力が入りました。
◎「水問題に関する発表会」
第1セッションを締めくくる発表会として、これまで学んできた水問題に関して各グループでビジョンボードを作成し、スキット(寸劇)形式で発表しました。
各グループとも個性的な内容となり、最後には全員でステージに上がり、We Are The Worldの大合唱になりました。
このように、私たち学習サポートチームのファシリテーターは、第1セッションでは、2030年のありたい姿(Vision)の構築に向け、現状を把握する、問題点の因果関係を考える、解決策を立案する、ビジョンを描くという大きな流れを設計した上で、毎回のディスカッションを試行錯誤をくり返しながら入念に準備しました。
次回へ続く。