29 9月
『アジア青年の家』とファシリテーション その-3「チームビルディング」
Posted in H22年度アジア青年の家, アジア青年の家, ファシリテーション, 平井雅 on 29.09.10
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シリーズ3回目の今回からは、前回「おおまかなプログラムデザイン」について触れたことを少し掘り下げてみたいと思います。
まずは、チームビルディングの視点からプログラムを振り返ります。
◎チューター合宿
今回、事前にチューター合宿を開催したことは大成功でした。カルティベイトの学習サポートファシリテーターチームは総勢9名で、16名の大学生チューター、2名の大学生記録係を含め、全員で2泊3日の合宿に望みました。
合宿に先立って行ったファシリテーターチームの打ち合わせでは、組織開発の理論を援用し、まずはこの「チューター合宿の目標」として以下の5点を明確にしました。
- 目標の共有
- 役割の共有
- 進め方の共有
- 水問題に関する知識の共有
- 人間関係の構築
これにより、ファシリテーター、チューターとしてプログラム期間中、参加青年の学びと気づきをサポートするために、自分たちは何をすべきかを、意識的に考え、行動できるようになったと思います。特に、我々学習サポートチームと、生活面や宿泊・移動などの面倒を見るロジスティックチームの役割の違いをハッキリさせたことで、プログラム期間中の混乱を少なくすることができました。また、ファシリテーション・スキルの講座を実施することで、ディスカッションの進め方、手法を共有しました。
チューター合宿は、本番の期間中に行うであろうゲームやディスカッション、振り返りの手法を実際にやってみるという、絶好の検証の機会ともなりました。この合宿でやってみた「マシュマロチャレンジ」や「KPTT(ケプト)」などの手法は、ファシリテーター、チューター自身がその効果を実感できたので、本番で自身を持って取り組むことができました。
今回のチューター16名は、沖縄県出身の大学生と海外から沖縄への留学生、大分県にある立命館アジア太平洋大学の学生(海外からの留学生)から構成されました。全員が個性的・創造的で素晴らしい能力を持ったメンバーが集まりました。そのチューターたちが、合宿3日目の最後には、チームワークといい人間関係といい、ガッシリといいチームになっていて、非常に頼もしく感じました。
<チューターの構成>
- 沖縄県出身者6名(沖縄大学、琉球大学、沖縄国際大学、関西学院大学の学生およびNY市立大学卒業生)
- 琉球大学への留学生(ミャンマー、台湾)
- 立命館アジア太平洋大学への留学生(ベトナム、ブルネイ、インドネシア、タイ、マレーシア、韓国、中国、カンボジア)
このようにチューター合宿では、ファシリテーションの教科書に出てきそうなぐらい、短い期間で素晴らしい成果を上げることができました。
◎マシュマロチャレンジ
まずはマシュマロチャレンジの動画をご覧ください。
↓画面の下の「View Subtitles」をクリックして日本語を選択すると字幕が出ます。
これは、チームワークそのものや、チームでの創造行為、試行錯誤の必要性、 ファシリテーションの有用性について気づかせるグループワークで、マシュマロ1個と20本のスパゲッティ乾麺、粘着テープ、紐などを使い、マシュマロが頂点に乗った状態のタワー状の構造物を作ることを目指します。今回は5人1組を作り、18分間の制限時間内に1番高いタワーを作ったチームが勝ちというルールで進めました。
マシュマロチャレンジ自体、非常に良くできたゲームですが、このゲームの後にグループでしっかり振り返りをすることが重要です。
リーダーは誰だったか、自分はどんな役割を果たしたか。最初に目標を描くことや認識を見える化して共有することの重要性などについて気づく機会となります。
チューターの視点で見れば、自分のグループの参加青年の個性やこれから果たすであろう役割を観察するのに絶好の機会なわけです。
このワークをグループディスカッションの最初に取り入れることで、参加青年は否応なしに「チームワークってどういうこと?」と問いかける視点を持つことになるわけです。
◎KPTT(ケプト)
KPTT(ケプト)とは、私たちファシリテーターがよく使う振り返りのワーク手法です。普通KPTと書いてケプトと呼んでいますが、日本ファシリテーション協会沖縄サロンの仲間うちでは、KPTTと最後にTをひとつ余計に入れます。最後のTが結構重要です。
- 今後も維持したいこと(Keep)
- 問題だと思うこと(Problem)
- 今後、試したいこと、改善したいこと(Try)
- 感謝する人、もの、事柄(Thanks)
今回は、これをチームと個人というマトリックスにかけて利用しました。
実は、第1セッションの終盤、中間の発表会の直前にKPTTを実施したのは、それまでの自分たちのグループディスカッションを振り返り、そこで得られた一体感を一気に発表の準備作業につなげ、達成感を得るために絶好のタイミングだからです。
なぜ、KPTTに効果があるのかは、ファシリテーターの定番理論として有名な「ジョハリの窓(Wikipedia)」が説明してくれます。イケていると思っていること、イケてないと思っていること、チャレンジしたいことなどをお互い話し合ううち(場合によっては“カミングアウト”するうち)に、自然と?の領域が狭まり、コミュニケーションの風通しが良くなるわけです。
また、少し専門的ですが、U理論(Theory U)の観点から言えば、Presensingというブレイクスルーが起こる準備として、お互いの話に耳を傾け、お互いを観察し、共感するというプロセスのきっかにも、KPTTはなりえると思います。